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アニメ漫画など妄想・趣味など炸裂してしまう予定のページになります 小説イラストなどいろいろupしていく予定です ※以下のようなことが含まれる予定なので嫌な方は見ないでください(^_^;) ※BL、GL、二次創作的なものが苦手な人、またはこれらが良く分からない人はここから退避して下さい。責任はとれませんので… おkって人はこんなページですが楽しんでいってください(^o^)丿
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pixivにあげている赤降小説になります

設定のようなもの

・前世、生まれ変わりものです。降旗君の夢の話から前世のことが明らかにされていく感じです。
・出てくるCP(予定)…赤降(メイン)/火黒/緑高/ 
・夢の中の時代設定 江戸時代 享保の改革くらい(適当)※途中血や暴力表現あり ※年齢操作あり ※能力とかあり

…文章支離滅裂かもしれません。なんでもOK!という心の広い方はどうぞ!

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目の前には大きな血だまり。着物を着た人が腹部を大きく切られ地面に横たわっており、呼吸も弱くなりつつあった。
“このままじゃ、死んでしまう。嫌だ!嫌だ!嫌だ!” 俺は倒れている奴の鞘から刀を引き抜き、自分の腕を思い切り切り裂いた。赤い線となって血が地面に刀に滴り落ちる。赤く染まった腕を刀の主の口元に持っていく。刀の主は一瞬大きく目を見開き、辛そうな表情をし、腕に噛みついた。…綺麗なオッドアイである。
「んっ」唇をかみしめてその痛みに耐える。噛みつく力がだんだんと強くなるにつれ、腕がしびれ、身体の力が抜けていく。血が吸い取られているのだ。身体が次第に前のめりになり、視界が減っていき、息も荒くなる。
“どうか…どうか助かってくれ!!”
俺の血の気が引いていくとともに、刀の主の頬に赤みが戻り始め、呼吸が安定してきた。
そして、背後に鋭い痛みが走った。遠くで自分を呼ぶ声がする。そこで、意識は途切れた。

“なんだ今の?変な夢だな。”
ppppppp。光樹は自宅のベットで目が覚めた。朝6:00のアラームが鳴り響く。光樹は部活の朝練のためいつもこの時間に起きている。
“さみーな。布団から出たくねー。…でもそういうわけにはいかねーか。”
学校まではそんなに遠くなく朝のランニングには丁度いい距離である。
「いってきます。」
吐く息が白く染まる。夢の中もこんな感じで、あと雪も降ってたな~と考えながら走っていると黒子や火神と合流した。
「おはよ」
「おはようございます」「おはよう」
唐突だと思ったが夢のこと話すことにした。
「なぁ今日夢見たんだけどさー。なんかいつも見る夢とは違う感じでリアルだった」
「どんな内容ですか?」
「えっと…着物着てる刀で刺された人を助けようとしてた」
「Japanese samuraiか!」
火神が目を輝かせている。
「火神君…嬉しそうですね…。降旗君、夢って昔経験した事とか前世の記憶とか言いますよね。夢占いとかもありますし」
「へ~そうなのか。いろいろ知ってんな黒子」
「…君だって図書委員でしょう?本は結構読んでいたと思うんですが…」
「読んではいるけどそういう部類の本は読まないからさ」
黒子の知識の多さにはいつも感心させられている。俺は占いとかスピリチュアル関係の本は読まないから疎い。
“前世の記憶ねーそうなると俺が血あげてたアイツは吸血鬼?日本なのに?色々とファンタジーだな”
「フリ、なんかまた面白い話があったら聞かせろよな」
「ん?わかった」
その後いつも通り朝練をし、授業をうけた。夢は2度寝をするとよく見ることがある。部活でのこととか何かに追いかけられる夢とか…その日にあったこととか色々影響しているらしい。ウィンターカップの後俺はよく雪に紅い花びらが落ちている夢をよく見るようになった。そこで何かあるわけでもなく、雪が降り続いている夢。その夢に関係しているのだろうか?

バン!!机をたたく音だ。
「降旗君!聞いていますか?」
「ふぇ?!」
どうやら授業中に寝ていたらしい。午後の授業眠すぎる…しかも古典。本は好きだけど所々が呪文に聞こえてくる。
「すっすみませんっ…」
しかもよりによってこの先生は容赦ない先生で予習や宿題をやっていないと点は引くし授業中答えられるまで立っておかないといけないし、目線も怖く膝がガクブルになるのである。
「僕の授業はそんなにつまらないかな?」
ふるふる。全力で首を振る。
「…立っておきなさい」
「はい。」
声とかは好きなんだけどなー教科書を構えて答えられそうなところを探す。部活の時間に早くなんねーかな。
 授業も終わってしまえば部活ホイホイだ。足早に部室に行こうと、荷物をまとめる。ランニング今日は何キロかなー。
「よう、フリ!」
「火神!今日授業のさぁ」
「古文だろ。立たされてたなフリ。勇気あるな、お前。明日大丈夫そうか?」
「ちょっと気が抜けてたっていうか…明日答えられるように頑張るよ」
「まっ俺が言えたことじゃないけど頑張れな」
ぽんと肩をたたかれる。持つべきものは友だよな、うん。
バスケの練習はきついけど楽しい。今日はシュートもいくつか決まり上機嫌だった。休憩時間火神や黒子たちと雑談していた。
「降旗君」
「何だ黒子?」
「今日の夢の話で…古文の授業で言ってたこと思い出したんですけど」
「俺今日授業寝てたから分かんないぜ」
「それは知っています。」
俺は思わず苦笑いをした。
「小野小町の和歌で、“思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを”っていうのがあるんですが…まぁ関係ないですよね」
黒子それどういう意味…と聞こうとした時、休憩時間が終了してしまった。

 その夜俺はまた夢を見た。おばあさんと小さい俺が一緒に森の中の小屋で暮らしている。とても裕福とは言えないが幸せそうだ。俺はいつも通り夕飯で食べる山菜を採りに行っていた。森の奥のほうに少し手入れされている畑がある。おばあちゃん。喜ぶかな?と考えながら小さな手で抱えるようにして小屋に戻った。開け放たれている扉、踏み散らかされている花何だか様子が違う。おそるおそる中にいるであろう人に声をかける。
「……おばあちゃん?」
小屋の中には見知らぬ大人がいて床にはあばあさんが倒れていた。
「おばあちゃん!!」抱えていた山菜を床に落とし駆け寄った。血は流れていないが頭に殴られたような跡があった。
「おー坊主帰ってきたか。一緒にきてもらうぜ」男が光樹に向かって近づいてくる。
「逃げるんじゃ!!…光樹っ」
今まで聞いたことがない声で光樹に向かって叫ぶ。
「待てっこのガキ!!」
膝をがくがくさせ、涙を流しながら森の奥のほうへ走った。“おばあちゃんおばあちゃん”と心の中で叫びながら。途中、木の根っこに引っ掛かり転んだ。子供の足で逃げられるはずもなく、男に捕まった。
「ちょっと寝ててもらうぜ」
「うっ」首に強い衝撃を受けた後意識を失った。
 首の痛みと冷たさに目が覚めた。寝かされているのは独房のような場所。光が入らずあたりは真っ黒で、足枷がはめられている。足跡がだんだんと近づいてきた。
「目が覚めたみたいだな」
「・・・っ」怖くてうまく声が出ない。かちかちと歯が合わさる。
「まずはお前の力を試させてもらう」
何の事だかわからなかった。力?試す?
「お前は持つ力のせいで両親を殺され、村から逃げ隠れて生活していたんだ。…こっちに連れてこい!」
おばあちゃんが光樹の目の前に倒される。男は持っていた火縄に火をつけた。光樹はその場を動かないように男に身体を抑えられ耳を塞がれる。すると少し経ってあたりに火花が散り、そして…
ボンッ 辺りに低温の大きな破裂音と硝煙、そして鮮血が広がった。
身体を抑えられていた手が取り外される。何が起きたのかわからなかった。
「おばあちゃんっおばあちゃん!!」
血が流れ出すとともに身体がどんどん冷たくなっていく。どうしよう、おばあちゃんが死んじゃうそんなの…
「嫌だ!!」
光樹の身体が仄かに光りに包まれ、一気に光が放出される。
「ぐっ眩しい…」男が小さく声を上げ腕で目を隠す。
「うわぁぁぁぁ」光と呼応するかのようにおばあさんの傷口が塞がっていく。そして徐々に光は弱くなり、消えた。
グラッ。意識がなくなり、その場に崩れ落ちた。
「どうやら力は本物らしいな。さて、これから先どうするか…」

「どーなるんだよ!!」あ~やっぱ夢見悪ぃ。ひとりつっこみである。光樹は夢から覚め身体を起こした。
“光樹の力はね、癒しの力なんだよ”
両親から自分が持つ力については説明を受けたことがある。でも今までその力が発動されることはなかったし、力の使い方も知らない。時が来ればわかるということだった。
「時が来れば…か。んなことが起きることはこのご時世にないと思うけどな。さて朝飯食べよ」
今日は京都の洛山高校との練習試合の日だ。京都からこっちへ遠くから出向いてくれるとのことで監督から、
「遅刻なんかしたら練習メニュー三倍ね❤」と笑顔でくぎを刺されている。毎日のメニューでもくたくたなのにこれ以上増やされたら体力が持たない。
「でも…気ノリはしないなー」
洛山高校の赤司には逢いたくない。ウィンターカップ以降赤司は恐怖の対象である。それに最近変な夢ばっか見るし正直寝不足だ。でもバスケは好きだし監督命令だし、行くしかないか…
光樹はいつも通り朝のランニングもかねて学校に向かった。あっ黒子と火神だ。
「おーい。おはよう!」
手を振り、勢いよく道に飛び出すと二人が何やらあわてた顔でこちらを見ている。ん?
『「降旗君」「フリ!!」後ろ!!』
「へ?」
後ろに振り向くと車が目の前にあった。咄嗟に避けようとしたが間に合わない。
ゴンッ 俺は車と衝突しその反動で壁にぶつかり、頭を強く打ち付けその場に倒れた。



 俺は真っ白な巫女装束風な服を着て顔を隠すためか頭にフードのように布をかぶっていた。以前のように足には足枷がはめられている。目の前にわき腹から血を流している人が運ばれてきた。
「早く助けてくれ!痛くてたまんねえ!」
「分かりました。いますぐに。おらっこっちこい!」
足ががくがく震えてうまくたてない。男たちに両脇をもたれ無理やり立たされる。
“いいか。今からお前の前に怪我をした人が運ばれてくる。その人の傷を治すんだ。分かったな?逆らったらお前のばばあを連れてきてまた同じ目にあわすからな?無駄口も叩くなよ”そういわれここに連れてこられた。
こわいこわいこわいっ。傷もそこから流れてくる血も光樹にとっては何もかもが怖かった。
横にいる男が恐ろしい目でこっちを見ている。おそるおそる手を傷口にかざして力を込めるが何も起こらない。なんで?!
「さっさとしないか!!」バン!!光樹の背中を棒で思い切りたたく。
「ひっ」涙が次々と流れだす。
「おらっ」バシッバシッ棒で力の限りたたかれる。服に血が滲んでいく。いたいいたいよ。
「…ちっしょーがねぇ。ばばあを連れてこい!」
「!!止めて!!おばあちゃんを殺さないで―!!」
ぱぁぁぁぁぁぁぁ光に包まれるとともに傷が塞がっていく。
はぁはぁ。光樹は息も絶え絶えで汗をかいている。今にも倒れそうだ。
「頭を下げろ…そうだ。こいつを連れて行け」
光樹は頭を下げたのではなく今にも倒れそうになっていたためにうなだれていたのだった。次の瞬間光樹は床に倒れた。
目が覚めると牢の向こうで男が話をしている。昨日わき腹を怪我していた男から大量の金が送られてきたそうだ。
「これからこいつで儲けさせてもらおうぜ。なぁに病気で死にましたって報告すればいい。そうすれば怪しまれないさ」
翌日から地獄のような日々が始まった。力を使った後はひどく疲労が残り、相手の痛みを一時的ではあるが感じるため痛みに耐えなければならなかった。怪我をした人が連れてこられ、光樹の力を使い傷をいやす。力が出てこないとそのたび脅され、棒でたたかれ、折檻された。初めは泣き叫んでいた光樹だったが次第に声が出なくなり無感情になっていった。あと何日、何回続くの…
「この子は力の制御ができていません。このままでは死んでしまいます」
力を使い果たし床に倒れているときに小柄な男がやってきた。
「こいつ、いつの間にここにいやがった?!おまえは誰だ?」
「僕は黒子テツヤといいます」
「…お前も異能者なのか?」男たちが黒子の周りを取り囲む。
「さぁ?」黒子が光樹を抱え、消えた。
「どこいったんだ!探せ!!うわっ火だ。火を消せ!!早く!」
いつの間にか火が建物に回っており、煙が辺りに充満していた。黒子はそのころ外に出ており、遠くに向かって走っていた。
「もうだいじょうぶですよ。安心して寝ていてください」
「……」
誰なんだろう。この人。あったかいなぁ光樹は黒子の腕の中で温もりを感じていた。
「黒子っ」
走っている最中、火消しの格好をした人とすれ違い声を掛けられた。一瞬振りかえりすぐ前を向き走りだす。
“…ごめんなさい。火神君。今は時間がありません”
次第に人里から少し離れた場所になり、人通りがなくなり少し暗くなってきた。
「…生きててくれたんですね。よかった」黒子は今にも消え入りそうな声で呟いた。光樹には何の事だか分らなかった。
山の奥のほうに屋敷が見えてきた。
「もうすぐ着きますよ。それまでもうひと踏ん張りです」
屋敷の庭にはツバキの花がたくさん植えてあり、庭園のようになっている。屋敷に就くと扉が開き、背が大きなまつ毛の長い男の人とその人よりは背の低い笑顔な男の人が出てきた。
「緑間君。この子をお願いします」
「人事を尽くすのだよ。高尾準備を」
「うぃ―っす」
緑間と呼ばれた人に傷の手当てを受けた。机の上にはいろんなものが置いてある。
「…熱もあるのだよ。しばらく横になって休ませるべきだな」
高尾という人が冷たいタオルを頭においてくれた。
「真ちゃんはあまり話さないけど根はやさしい人だから安心してね」
「高尾余計なことを言うのではないのだよ」
「はいはい」
光樹は少し経って眠りに就いた。いつぶりだろう布団の上で横になるのは…気持ちいい。
ス―……光樹が寝息を立てはじめた頃にオッドアイの持ち主赤司と先ほどの黒子がやってきた。
「眠ったかい?」
「さっき眠ったのだよ」
「この子体中に痣があったぜ。しかも口は利けないようだったし」
赤司は目を細めた。あいつらはこんなひどいことをこの子にしてきたのか。拳を握り締める。
「赤司君はこの子とどこで出会ったのですか?」黒子が赤司に尋ねる。
「僕はここの藩主になる前は捨て子でね。一時期僕もあの施設に捕えられていてそこで逢ったんだ。そしてこの子のお婆さんの服を着せられ火縄銃で撃たれた。そして僕は彼に助けられたんだ。多分、彼はあの時撃たれたのは僕ではなく自分のお婆さんだと思い込まされている。それに、お婆さんはすでに亡くなっている。」
「そんなことがあったんですか」
「ちょっ、でも赤司とお婆さんでは色々と違いすぎるんじゃね?いくらなんでも…」
「今より小さかったこともあって恐怖心も大きかったんだろう。布で全身を覆っていたからなそれに目の前で起きていることの衝撃が大きすぎて見えてなかったのかもしれない。」
「そうか…ここでの生活で少しでも傷をいやすことができればいいのだよ」
「真太郎、和成には傷の手当てを。テツヤには力の使い方を教えることをお願いしたい。いいか?」
「もちろんなのだよ」「あいあいさー」「分かりました」
「では僕はこれで失礼する」赤司はそう言い残し、屋敷の外に出て行った。
「なー」
「なんなのだよ高尾?」
「赤司はなんで自分であの子のもとに行かなかったんだ?そもそもこの計画たてたの赤司だろ?」
「それは…立場もあるでしょうし、それになにより…」と黒子。
「なにより?」
「赤司君が行ったら何が起こるかわかりません」
「なるほどねー」
赤司は頭に血が上ると冷静ではあるが何をしでかすかわからないそういう人物である。実際自ら赴いていたとすれば施設を燃やしたぐらいで済むとは思えない。今までも赤司が直接赴くことがあった。その時はそこに何もなかったかのように跡形もなく消えていたのだった。
「これぐらいで済んだと考えればあいつらは命拾いしたってことだな」
光樹は布団の上に横たわり施設での生活を思い出しうなされていた。身体の疲労も大きいが精神的な疲労も大きい。
“待って!おばあちゃん行かないで!!…”思い出すのは一緒に住んでいた森の中の住まい。あそこでずっと暮らせたらよかったのに…必死で手を伸ばす。すると温かいものに触れた。
「目が覚めたかい?」
光樹は目を大きく見開いた。綺麗な紅色と金色の眼…温かいと思っていたのはこの人の手だったんだ。声が出ないのでこくこくと頷く。どうやらずっと手を握って離していなかったようで、僕の隣に添い寝をする形になっていた。
「朝餉の用意ができている。食べるといい。」
机の上に乗せられているのは白米と麦を混ぜたご飯と大根の味噌汁であった。湯気が出ておりできたてのようだ。
光樹は手を合わせ、箸を持ち口に運んだ。
うっうえっ。
口に入れていたものと胃液を吐き出した。施設の中で行われていた食べ物ではない普通口には運ばないであろうものを無理やり食べさせられていたことを思い出したのだ。ここはあそことは違うのに…
「安心して、怒ったりしないから。無理に食べなくていい。ゆっくりでいいんだ」
赤司は光樹を引き寄せ、ぽんぽんと背中をさする。光樹は身体をしばらく赤司に預けていた。少し経って光樹は屋敷の主たちに呼ばれた。
「まずは自己紹介からしますね」僕を助けてくれた小柄の男の人が言った。周りには昨日見たような気がする人たちが勢ぞろいしていた。
「僕は黒子テツヤといいます。力の使い方について教えますね」
「こちらは緑間真太郎君と高尾和成君。君の怪我の治療をしてくれます」
「よろしく!」「…なのだよ」
「そちらが洛山領内赤司征十郎様。ここ一体の土地を納めています」
「屋敷や庭園の中であれば自由に使って構わない。のびのびとすごしたらいい」
光樹はひとりひとりお辞儀をした。その日から黒子先生による力の使い方についての授業が始まった。
 「まず想像してください。手の中に身体の力の流れが集まっていく感じです。僕が一度してみますから見ててくださいね」
光樹と黒子は庭園内のカキツバタの池に来ていた。黒子が目をつぶり手を八つ橋の上から水面のほうに向かって手をかざす。徐々に水面に波紋が浮かび、手を上にあげると水が丸い塊になって宙に浮いた。黒子が手に少し力を込めると、水の塊が音を立てて割れた。
「こんな感じで力を放出したり、制御して圧縮させたりもできるんですよ。…えっと力を抑えたり使ったりする強さのことです。まずは力の込め方からですね。とんとんとんと言いますからちょっとずつ力をこめてみてください。」
こくと頷き黒子が言ってくれる言葉に従って力を込めていく。すると光が徐々に光樹の手の中に集まっていくそして…
メリッ
「何の音でしょう?あっ橋が、力を込めるのをやめてください!!うわっ」
光樹は力を使うことに集中していて聞こえていない。ぱぁぁぁぁぁ力が放出され、その衝撃で橋の板が割れた。メリメリっパシャン!二人して池の中に落ちた音である。泥まみれ、着物がびしょ濡れである。
「大丈夫ですか?…怪我はなかったようですね。すみません。ここを選んだばっかりに…立てますか?」
光樹は池に落ちたままじっとしていた。それを見た黒子が光樹を抱き上げ、池の外に下ろす。濡れていない部分の肩衣で光樹の顔の泥をぬぐう。
「最初は僕もうまくできなくてよく失敗したものです。これから頑張りましょう!」
それから毎日特訓をした。光樹は力をとにかく放出することしか知らなかったので、力の制御は難しく苦戦した。
「そうそうその調子です。ゆっくり強弱をつけながら…上手です。明日はちょっと練習はお休みにしましょう。ゆっくり疲れを取って下さいね」
こくと頷き。光樹は行水をすませ、寝床に就いた。
「彼はどのような感じなんだい?」赤司が黒子に尋ねる。
「力の制御は最初に比べてかなり出来るようになっていますよ。でも所々出来なくて爆発させてしまいます。たまになら身体の負荷が少なくて済むのですがちょっと今のままでは心配ですね。ただ…」
「ただ?」
「ここに来て彼はまだ無表情のままで、力の練習中もたんたんとただこなしているというか…生気がありません。緑間君たちが身体の傷はかなり治ったと言っていました。ですからあとは心の問題ですね」
「僕も心配だ。食事もあまり食べられていないし声もまだ一度も聞いたことがない。彼に与えられた心の傷はかなり深いのだろう。
お婆さんのことを言うのもまだ先になりそうだな」
「今はまだ亡くなっていることを言わないほうがいいでしょう。心が受け入れられるようになるまで見守っていきましょう」
二人は知らなかった。この会話を聞いていた人物がいたことを…
 翌日、黒子が光樹に朝餉の用意ができたと起こしにいったとき、寝床に彼の姿はなかった。
「いったいどこに?赤司君に知らせないと…」
「赤司はもう探しに出かけたのだよ」
「そうですか…それでは、僕たちも探さなくてはですね」
赤司は庭園の中を捜していた。どこ行ったんだあの子は。昨日テツヤと練習していた八つ橋周辺にはいない。もっと奥のほうだろうか…カサっ。音がする…近くだ。上を見上げてみる。…いた、木に登っている。
「何をやっているんだ。降りておいで」
木の下で手を広げる。タンッタンッ。光樹は聞くそぶりも見せず器用に木の太い枝から枝へ移動している。動きが俊敏で普通の動きではない。この子は、薬込役のようなこともやっていたのか…?
「待つんだ!」
赤司は自信の眼を使い光樹の動きを読む。普段赤司は指示していくほうが多いのだが、自ら動くときは力を駆使しながら相手の動きを先読みし、追い込めていく。
「簡単には逃げられないよ」
赤司はすぐさま木に登り、光樹を追いかける。光樹が感情鈍磨の状態になっているせいか、思考が読みづらい。しかし体格差もあってか赤司は光樹に追いつき、手をつかむ。光樹は捕まれた手を振り払おうとはしなかった。
赤司は光樹を横抱きにして木から下ろし、問いかけた。
「どうしてここから逃げようとしたんだ?ここでの生活がつらかったか?」
首を振る。
「前の家に戻ろうとしたのか?」
光樹は首を振り、着物の袖から何かを取り出した。…小刀だ。自身の首に持っていき、振り下ろした。その瞬間赤司の手が即座に小刀をつかんだ。刀を赤司が握りそこから血が滴っている。
「君は今何をしようとした?自分の命を何だと思っているんだ!!」
小刀を握っている光樹の手が小刻みに震える。
「…………って」光樹から声がぽつりと漏れ、
「…お婆ちゃん死んじゃったんだ。もうお婆ちゃんいないんだ!!僕もお婆ちゃんのところに行く!!」
パァン。
静寂をかき消すように響く音。平手打ちの音である。赤司が光樹に向かってやったものだ。
「お婆さんの気持ちはどうなるんだ!!お前が死ぬことを望んでいると思うか?!!いいや、違う。生きることを望んでいたはずだ。そんなお婆さんを死んでまでも苦しめる気なのか?それでも死にたいというのなら止めはしない。ただ…僕は君がいなくなるのはとてもつらく悲しい。僕だけじゃないテツヤ達だってそうだ。そうやって残されたものは死ぬまで苦しみ続けるんだ。……今の君のようにね」
いつの間にか光樹の瞳からは一筋の涙が流れていた。刀を握る手の力が抜け、赤司が刀を離すと簡単に地面に落ちた。光樹の身体から力がふっと抜け、身体を赤司が支える。
「お婆ちゃんっ逢いたい、逢いたいよぅ。うっ」
優しかったお婆ちゃん、ご飯を作ってくれた、話を聞いてくれた、遊んでくれた、抱きしめてくれた、いつも笑顔でいてくれた。もう二度と戻ってくることはないのだ。薄々気づいていた。もう死んでいるのではないかと。でも、認めたくなかった。認めたくなかったのだ。
「お婆ちゃんっお婆ちゃんっお婆ちゃん…うっ…ふっえっ…」
大粒の涙が光樹の眼から次々と流れる。赤司が光樹の背をゆっくりとなでる。
「君は優しい子だ。僕の命の恩人でもある。そんな君が簡単に死んでいいはずないんだ…」
光樹はいままで我慢していたものを吐き出すかのように泣き続けた。泣きやんだ頃には、巳の刻を回ろうとしており、その頃には寝息を立てていた。
 「眠っちゃいましたね。…彼、僕たちが話していたことを聞いてしまっていたんですね」
黒子や緑間、高尾が隠れていた木の陰から出てきた。
「ああ。疲れたんだろう。今まで辛かっただろうな」
「様々なことが一気にあって、負担が大きかったのだよ。この子はすべてを受け止めるにはまだ幼い」
「何はともあれだな。寝顔はやっぱり子どもなんだなー可愛い顔しちゃってまぁ」
「早く布団に寝かせてあげましょう」
「そうだな」
赤司が光樹を抱え寝所まで連れ帰った。そして、切り傷の手当てをした後居間で全員集まり話をした。
「皆も見ていたと思うのだが…推測するところ彼はただあの場所で力を利用されていただけではなかったらしい。普通の子どもがあの速さで木の上を移動できるとは思えない」
「教育されていたということでしょうか?」
「無意識でやっていたとは考えにくいだろう。小刀を出し首に持っていくまでの動きは一瞬だった」
「あの男が上様と繋がっているとは到底思えませんが…それに上様のお人柄の噂によるとずいぶんお心の広い方のようです。こんな子どもにこんなことをさせるとは思えません」
「直接つながっていないにしても内部との内通者がいる可能性があるのだよ」
「領内は財政難で困窮しているし、何があってもおかしくないんじゃね」
「このまま何もなければいいのですが…」
「僕たちであの子を守り抜くんだ。なにがあっても」
「ですね」「もちろんなのだよ」「だな」
「にしても…オヤコロとか言ってた赤司からあんな言葉が出るなんて…ひっ」
赤司が笑顔で高尾に向かって鋏を突き立てている。磨きあげられた鋏は刃先がきらりと光る。
「和成、何か言い残すことはあるか?」
「…申し訳ございませんでした」
赤司が鋏をしまう。
「おふざけはこのくらいにして」
「おふざけ?!かなり怖かったんですけど」
「何かあるのか?」
「…いえなんでもございません」
 光樹が目覚めたのは申の刻。夕餉の時間だ。
「おはようございます。あっもうこんにちはですね」
黒子が光樹に呼び掛ける。
「こっこん…にちはっ」
布団を持ち、びくびくと震えている。光樹の声を聞いて黒子が笑顔になる。
「夕餉の準備ができていますよ。顔を洗っていらっしゃい」
「うんっ」
たったったと廊下に走る音が響く。ぽふっ何かにぶつかった。何だろう…?光樹は上を見上げる。
「廊下は走ってはいけないのだよ」
怪我を治してくれたあの人だ。背が3人の中で一番高く、近くに立たれると凄味がある。
「ごっごめめめめっんなっさぁいいい」
涙目になってしまう。叩かれると思ったからだ。びくっと身構える。
「分かればいいのだよ。次から気をつけるようにな」
そう言って光樹の頭にぽんと手を乗せる。
「あー真ちゃんが泣かした!」
高尾と赤司がやってきた。
「なっ何を言うのだよ!!注意しただけなのだよ」
「真太郎彼に何をしたんだい?」
「赤司まで!まったくもって何もないのだよ!」
「あーあ。なーかしたなーかした」
「高尾いい加減にするのだよ!」
緑間が怒って顔を赤くしているところに黒子がやってくる。
「3人とも何をやってるんですか。びっくりさせてどうするんですか!ぽかんとして見ているじゃないですか。あと、ご飯が冷めちゃいますのでさっさと席について下さい」
「真ちゃんをからかうのはおもしろいな~」「真太郎はからかいがいがある」
「…いい加減にするのだよ」
「あんな人たちのことはほっといて顔を洗いに行って下さいね。ご飯が冷めないうちに」
こくっと頷き、光樹は顔を洗いに行く。遠くから「あんな人たちとは何だと?!」と声が聞こえる。
 「頂きます」手を合わせ夕餉を食べる。光樹は今まで食事を食べるとすぐ吐いてしまっていた。おそるおそる口に運ぶ。
「…おいしい」眼を輝かせる。
「それはよかった。どんどん食べるんだよ」
「うん」
よほどお腹が減っていたのか光樹は一気に平らげてしまった。ご飯ってこんなにおいしんだ…。
「ごちそうさまでした!」
「全部食べましたね。よかったです。この調子で毎日食べましょうね。えっと…」
「…光樹っ。ぼっ僕の名前降旗光樹…です」 
最後のほうは消え入りそうな声であったが、しっかりとみんなの耳に届いた。
「これからもよろしくな、光樹」
 光樹が話しだしてからというもの屋敷の中が騒がしくなるほどにぎやかになった。光樹は話さなかったから分からなかったのだが、かなりのビビりであることが分かってきた。緊張するとどもってしまう。そこが可愛いのでからかってしまうのが赤司と高尾であり、いつも黒子や緑間に怒られている。光樹は一緒に生活をしていくうち3人のことをそれぞれ征十郎様、真太郎さん、和成、テツヤ先生と呼ぶようになった。高尾に対する呼び方がこうなったのは光樹に「堅苦しいのは嫌いなんだ、呼び捨てで呼んで」と言ったためだ。
ちなみに黒子による力の使い方の指導は続いている。今日は満月。辺りは月明かりに照らされている。光樹は眼をつぶり自分の広げた手と手の間に水を球にして浮かばせている。
「後はもう想像力を鍛えて頑張るしかないですね。毎日の鍛錬です」
「テツヤ先生ありがとう!!僕頑張る!」
「はい。頑張りましょう!もう夜も遅いですから今日はこれで終わりにしましょう。明日に備えて寄り道せず、屋敷に戻るんですよ」
「はいっ」
黒子に対しては随分と自然に話せるようになっていた。
「おうちに帰ろう!」
たたたっと屋敷まで続いている飛石の上を小走りで走っていった。すると、椿がたくさん生えている所に人影が見えた。テツヤ先生かな、ちょっと行ってみよう。
「…テツヤ先生?」まだ帰ってなかったの?
そこには椿の花を持ち口に運んでいる征十郎様がいた。周りにはたくさんの枯れた椿の花と花びらが散乱している。驚き周りをきょろきょろ見渡す。
「征十郎様…?何してるの?」
「光樹か…テツヤに言われなかったかい?まっすぐ帰るようにと。こんなところにいると風邪をひく、早く屋敷に戻りなさい」
赤司は額に汗を浮かべ、喉のあたりを押さえている。苦しそうだ。
「…征十郎様も一緒に帰ろう?どこか痛いの?真太郎さんに診てもらおうよ」
赤司の腕をひっぱる。
「お願いだから近づかないでくれ!光樹っ!!」
鋏を取り出し、言った。「帰るんだ!!」
「うっうぇえええん」
光樹は泣きながら屋敷まで走って行った。

「行ったか」
赤司は半吸血鬼である。なので普段は椿の花で力を補給したり、ご飯を食べたりしている。満月の夜だけは吸血衝動がうまく抑えられないので貪るように椿の花を求めてしまう。目の前に人がやってくると血のにおいがして吸血衝動が起きる。愛しい相手ならなおさらである。今回は何とか理性で抑えることができたが、次どうなるかはわからない。どうしても我慢ならないときは黒子たちに吸血をさせてもらっている。このことは光樹以外知っている。…今椿を貪っているのは見られてしまったが。起きた衝動を抑え込み額に汗をにじませ、満月を見る。
「月がきれいだ」

 翌日光樹の怯えようときたらすごいものだった。目もあわさないし、話しかけても言葉は交わさないし、話せばどもりっぱなしという始末である。当然、力の制御の練習もうまくいかない状態であった。
「光樹君…昨日のほうがうんと良かったですよ?今日はどうしちゃったんですか」
「えっと…その…」
「きっ昨日練習が終わって、帰ろうとしたときにね」
光樹は赤司の鋏を思い出した。サーと血の気が引く。
「なっなんでもない。今日もありがとうテツヤ先生っ」
「ちょっと待って…」
黒子が言い終わるよりも先に光樹は行ってしまった。まぁおおよその見当はつきますが。黒子は赤司の元に向かう。ほんとあの人はしょうがない人ですね。
「赤司君、昨日光樹君と何かありましたね?」
「ああ。椿の生気を吸っている所を光樹に見られた。心配しなくても彼には手を出していない」
「鋏は出したんですね?」
「そうだ」
はぁと黒子がため息をつく。どうせそんな事だろうと思ってましたよ、ええ。
「言い訳させてもらうとすれば余裕がなかったからね。そうするのが一番早いと思ったんだ」
「恐怖を植え付けさせてどうするんですか…いっそのこと話してしまいますか。僕たちのことについて」
「知らなくていいこともある。彼が疑問を持ち僕たちに聞くようなことがあればその時でいいのではないか?なるべく彼には普通の子どもとして生活を送ってほしい」
「分かりました。あのままでは光樹君が可愛そうなので、どうにかしてくださいね」
「…善処するよ」
子どもは一度恐怖を植え付けられると、なかなか消えないものである。もう少し手段を考えるべきだったか…
黒子と別れた後、光樹は緑間たちのいる部屋に来ていた。薬品のにおいが漂う。
「…真太郎さん」
「光樹どうしたのだよ?」
「…昨日征十郎様が具合悪そうだった。大丈夫かな…?」
「今朝の赤司の顔を見ただろう?安心しろ、大丈夫だ」
赤司、光樹に見られたのだな…それで今朝光樹の様子がおかしかったのか。
「本当?…しっ死ん…じゃったりっしなっ」
光樹からスーっと涙が一筋流れた。緑間が光樹の方を肩を軽くたたく。高尾が光樹の背中を優しくなでる。
「赤司は簡単に死ぬような男ではない、落ち着くのだよ。それに…こっ光樹が泣いているほうが心配するのだよ」
「…ほんとう?」
光樹は見上げる形で緑間を涙でうるんだ瞳でじっと見た。緑間は顔を赤くして下を向いて言った。
「本当なのだよ。心配なら赤司のところに行ってみるといい。話くらいなら聞いてくれると思うのだよ」
「ありがとう真太郎さん、和成っ。しつれーしました」
ぺこっとお辞儀をして光樹は去って行った。高尾は手を振って見送った。
「真ちゃん何照れてんの?確かに光樹のあの笑顔は破壊的だけどさ」
「うるさいのだよ、高尾…」
「それに」
「?」
「…俺はもうあんなふうに無防備に泣けないな」
「高尾…お前は優しい奴なのだよ」
緑間が高尾を抱きしめる。
「ありがとう、真太郎」

 その日の夜光樹は赤司の部屋の前に来ていた。スーとふすまを開けてみる。赤司は布団に入り横になっていた。
征十郎様…寝てる。謝ろうと思ったけど明日にしようかな。ふすまの前で光樹は声をかけようか迷っていた。
「光樹」
びくっと身体が震える。おそるおそる声のほうを見ると布団から上半身を起こした赤司がいた。
「こんな夜にどうしたんだい?」
「ぼっ僕、えっとごごめんなさい」
「どうして謝るんだい?…そこにいると身体を冷やしてしまう。こっちへおいで」
光樹は赤司の布団に一緒に入る形になった。光樹は何も話さない。少し震えているようだ。
「さて、昨日は怖がらせてしまってすまない」
「ふぇっ?」
「あれは…やりすぎたと思う。黒子にも怒られたよ」
征十郎様も怒られることあるんだ…光樹のこわばった表情が少し柔らかくなる。
「そこでなんだが…光樹が何か望むものをあげたいと思っている。食べたい物とかほしいものとか…なんでもいいんだが。何かないか?」
「…」
光樹は征十郎さまと一緒にいることに対してと征十郎さまが言ったことを今まで言われたことがなかったので困惑していた。
ご飯も食べさせてくれるし、やさしいし、おはなしも聞いてくれる。ほかにほしいものなんてないよ。
「…えっと」
「なんだい?」
「征十郎様、かっ身体悪い所とかない…?いたくない?しっ死んじゃったりしない?」
涙とともに言葉があふれだす。ああこの子は昨日の僕の様子を見て御不快(病気)だと思ったのか…亡くなったお婆さんと死が重なるんだな。赤司は光樹を自分の元へ引き寄せ、抱きしめる。
「大丈夫身体に悪い所なんてないよ。心配してくれたんだねありがとう」
光樹の頭を優しくなでる。
「こうすると温かいだろう?これが生きてるってことなんだ」
ほんとだとっても温かくて気持ちいい。とくんとくん音がする。その音を聞いていると次第に落ち着いてきた。しばらく赤司が光樹をなでていると光樹は次第に眠りについた。
「…こんな小さくて優しい君を一人残して僕が死ぬわけがない」
赤司は小さな声でぽつりと言った。

 次の日の朝、光樹が目が覚ますと隣に一緒に寝ていた征十郎様はいなかった。光樹は少しさみしさを感じた。一人で起きて身支度をする。朝餉にも征十郎様はいなかった。テツヤ先生に聞いてみる。
「征十郎様今日はいないの?」
「赤司君は上様に呼ばれていまして…夕餉ごろには帰ってくると思いますよ」
「ありがとう!テツヤ先生」
「さてと、後片付けをちゃっちゃと終わらせて今日も練習しましょうか。お手伝いしてもらえますか?」
「うんっ」光樹が顔を輝かせる。
片付けが終わり、二人で庭に出る。
「今日は癒しの力を実際に使って、花たちを元気にさせましょう」
「うん」
ツバキが植わっている少し庭の奥まったところに行く。ざっざっざっ。たくさんの音がこっちに来るような音がする。
「テツヤ先生?なんだろうこのおと」
光樹がそう黒子に尋ねるやいなや武器を持ったたくさんの武士が垣根を壊し、中に入ってきた。
「脱走した子どもをかくまっていると聞いた。われらに引き渡せ!」
「…嫌だといったらどうするんです?」
「無理やりにでも奪うまで。…かかれっ」
赤司君がいない時を狙うとは…情報を得ていたみたいですね。黒子は姿を消し光樹を抱え、屋敷へ向かう。
屋敷の陰に隠れて黒子が光樹に言った。
「光樹君、君はここに隠れていてください。いいって言うまで出てきちゃだめですよ」
黒子は光樹の姿が見えなくなるところまで走って行った。
「お侍さんこちらですよー!!」
「あっちだ、いけっ」
黒子は鎖鎌・短刀・鉄扇を使って応戦した。力を使うより本来はこっちのほうが得意なのである。刀をはじき飛ばしていっているが時々歯が身体にあたり、切り傷を作っている。
「…久しぶりだとなまってしかたありませんね」
「加勢するよ」
高尾と緑間がやってきた。緑間は刀を持っている。
「俺の風で吹き飛ばしちゃうね」
高尾が手を武士たちに向ける。すると地面の小石がころころと円を描き始める。そして…
「うわぁああああ」
巨大な風の嵐が起こり、刀を弾き飛ばした。
「ちょっとは懲りて…えっウソ」
「かかれっ」
刀は吹き飛ばしたがあとからあとからやってきている。
「多勢に無勢ってやつですか!」
「高尾。ごちゃごちゃいってないで倒すのだよ」
「僕もいます」
「っしゃ3人でいっちょやりますか!」
 カキンカキンと音がする。光樹にもこの音は何だかわかる。以前施設から外に連れ出されたときに戦場に行ったことがあった。
その時の音だ。こわいっ足が震える。でも…テツヤ先生、真太郎さん、和成、そして…征十郎様の顔が浮かぶ。テツヤ先生ごめんなさい。
光樹は隠れていた場所から飛び出した。僕にもできることはっ。
水辺に行き力を集中させる。そして侍たちに向かって放った。洪水のように水がいっきに流れる。でっできた。
「光樹君っ出てきちゃだめって言ったでしょう!!」
黒子が光樹に駆け寄る。普段見たこともない顔だったので驚きつつも光樹は黒子にいった。
「ぼっ僕もみんなとたたかう!じっとなんかできないよ」涙をぽろぽろながす。足はふるふると震えている。
「…しょうがないですね。出てきちゃったのならしょうがないです。僕から離れちゃだめですよ?」
こくと頷く。光樹は黒子の特訓の成果か自分で技を応用して、次々と繰り出していた。
「はやくここから出て行って!」
「うわっ」
光樹は水の玉で襲いかかってこようとする侍を打つ。

「あと何人いるのだよ…」
緑間は歯が切れなくなっていたので、峰打ちを繰り返していた。緑間は普段は怪我人を治すことを主として行っており、人を傷つける戦闘を好まない。この状況は早く終わらせたいのが本音だ。
「さすがにきついね」
高尾と背中合わせになるようにして戦っている。そんな時。
「っつ黒子あぶない!!」
「!」
黒子の後ろに侍がやってきており、刀を振り上げている。当たるそう思った矢先…
「テツヤ先生!!」
「光樹君!!」
ざしゅっ
光樹が黒子の前に飛び込み首から背中を切られ、地面には血だまりができている。
「しっかりするんです。光樹君っ」
「うっ」呼吸も乱れて苦しそうである。
「…緑間君、この子の手当てをお願いします」
「分かったのだよ」
「僕はあなたたちを許しません」
空気が途端に張りつめ空に雲が集まる。黒子が天に手を向ける。
「雲よ雨を降らせ、雷鳴を轟かせよ!風よ、かのものたちを吹き飛ばせ!」
ゴロゴロ、ピカッ
ゴ――…という音とともに地面が揺れた。雷が落ちた衝撃のせいだ。
「ぐわぁああああああ」
侍が宙を舞い、風と共に遠方へ飛ばされていく。倒れていた侍も含め全員いなくなっていた。


◆続きはこちら 紅 -弐-
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